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物忘れが激しく物覚えが悪い、三十路の備忘録

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ありふれた人生を全肯定する名作『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』

2014.08.07 (Thu)
懐かしさに人は弱い。少なくとも僕は弱い。
そこを端的に突いてきたのが映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』だ。
初めて観たのは大学生の頃だったが、泣いてしまいました。完全に。
父親ひろしの回想シーンがとにかく有名だけれども、あれはずるい。僕は自分を重ねるというより、
自分の両親のことを重ねてしまい、平凡なサラリーマンだけど僕ら家族のために頑張ってきたんだ
と思うともうダメだった。

オトナ帝国は懐かしい世界へ大人たちを巧妙に誘い込む。
観賞している大人たちも、懐かしい、懐かしいと、楽しかったあの頃に思いをはせる。
そしていつの間にか、オトナは過去から逃れることができなくなり、子どもたちはおいてけぼりを食らう。

すっかり幼児退行してしまう野原ひろし。
強烈なノスタルジアの魅力から彼を解放したのは、
つまらなかったかもしれない
つらかったかもしれない
平凡だったかもしれない
だけれども家族に支えられ、家族をつくり、新しい幸せをかみしめてきた今までの道程だ。

目を覚ましたひろしは、俺の人生はつまらなくなんかない、幸せを分けてやりたいくらいだと叫ぶ。

シンプルかつ至極まっとうなメッセージを、正面切って描いてみせる。
おそらく、全国のサラリーマンたちは大いに勇気づけられ、そうだそうだ!と喝采を送ったに違いない。
だから僕は、両親のことを思い出し、なぜか涙してしまうのである。

子どものころは良かったな。大人になんてなりたくないな。
俺の人生ってフツーだな。他人の人生は楽しそうだな。
そんなことを考えたことがある大人は少なくないはずだ。
人の不幸は蜜の味、などというのは、自分の幸せに自信がなく、もっと不幸な人がいることで
安心している心理でしかない。大概の人はそうなのだ。
僕の両親も、きっとそうだ。

だけどそんな人々の普通さを、この映画は全肯定する。
前にさえ進んでいれば人生は上々なのである。
だから懐かしさを振り切って前に進もうよ。そんなメッセージを象徴するように
しんちゃんは東京タワー(?)を全力で、転げまわりながらも駆け昇っていく。

そしてラスト、懐かしさを抱えたまま身を投げて事を終わりにしようとする敵役に
しんちゃんは「ずるいぞ!」と叫ぶのである。
大人になろうとしないまま、子ども達を幸せにしようとしないまま死んでいくのはわがままだ。

ひろしの回想に勇気をもらった親父たちは、ここに至って我が子に向き合い、
また頑張ろうとそっと背中を押される。

エンディングを飾る小林幸子女史の主題歌がとどめ。
おとうさん、おかあさん、今までありがとう、遠く離れても元気でいてね。
うわーん!

真面目な邦画では安っぽくなってしまいそうなテーマを素直に受け入れられるのは、
ユーモラスなアニメ映画クレヨンしんちゃんだからだろう。
観賞のハードルが高くないからこそ、斜に構えずに観られる。

おそらく未鑑賞であろう両親に、ぜひとも僕のいないところでこっそりと観てほしいと思う。



ちなみに、ほぼ同じコンセプトを感じたのが映画『三丁目の夕日』の第3作である。
2作目までは、とにかく懐かしさを売りにした古き良き時代の感動人情映画だった。
しかし3作目は少し毛色が違って、戦後復興を果たし急速に前進を始める日本を背景に、
登場人物の成長や旅立ちが描かれている。
さんざんノスタルジーに浸らせておきながら、それだけじゃダメなんだと告げるラストは
オトナ帝国と同様だ。

どちらも笑えて泣けて前向きになれる、わかりやすくていい映画だと思うなあ。

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